税理士は、実に面白い経歴を持っている方が多いと感じています。
変わったところでは、建設業の現場監督から転身した人、元コンビニ店長や元舞台俳優など。もちろん会計業界一筋の方や、家業を継ぐ二代目・三代目税理士、税務署OBといわれる税務職員出身の方もいらっしゃいます。また、会計士資格から税理士になった方は、大学から監査法人というエリートコースの後、独立開業して税理士を兼務するというのが一般的です。その方たちも含めて、税理士の経歴は多種多様です。
私は、この業界に入る前は、塾業界にいました。いわゆる「異世界転生組」です。大学時代のアルバイトを含め、約17年間この業界で会社員として働いていました。
カリスマ社長の元、四畳半の小さなプレハブから始まった塾が、生徒数500人の圧倒的な地域ナンバーワンになる物語を経験させてもらいました。そしてその後、組織が崩壊して、私を含めて従業員が次々と辞めていった悲劇も目の当たりにしました。
「あんなにいい塾が、あんなにすばらしい組織が、なぜこんなことになってしまったのか」という悔しさと、「もっと自分が何かできることはなかったのか」という無力感を感じました。そして「なぜこうなったのか、その理由を知りたい。どうすればよかったのか理解したい。」と思い、そのためには会社の経営を理解する必要がある、では会社の経営というものをよくわかっていそうな人って誰だろう、あ、税理士だ、という流れで税理士業界に足を踏み入れることになりました。
35歳を過ぎて全く縁もゆかりもない業界に入り、過酷な税理士試験にチャレンジしたわけですが、いま振り返ると、あの悔しさと無力感が支えになっていたのだと思います。
私の場合はこのような背景ですので、実のところ私の興味は、税務会計や法令ではありません(もちろん会計・税法の重要性は理解し学んでいますが)。むしろ、社長の考え方やリーダーシップ、会社がどういう歴史を辿ってきたのか、成長のポイントは何だったのか、そしてこれからどういう展開を目指しているのか、そのために何が必要か。そういう部分に心が燃えます。
当事務所の「いい会社を増やしたい」というコンセプトは、この経験から出てきたものです。少し傲慢な言い方かもしれませんが、会社が「いい会社」になり、「いい会社」であり続けるためのお手伝いをすることが私の税理士としての使命だと考えています。